目に見えない証明:白い糸の物語

MEGURUのシュシュを手に取ったとき、そこにあるのは美しく仕上げられた一つのアクセサリーかもしれません。しかし、私がその生地にハサミを入れる直前まで、元のヴィンテージ着物には一本の「しつけ糸」が残されていました。

◆ 「未着用」の証

日本では、仕立てたばかりの新しい着物に、型崩れを防ぐための白い糸「しつけ糸」を縫い込みます。この糸は、持ち主が初めて袖を通すその瞬間まで、決して外してはいけないという習わしがあります。 つまり、この糸がついていることは、その着物が「デッドストック」であることの何よりの証。昭和の時代から大切に保管され、一度も誰の肌にも触れていない「まっさらな状態」であることを意味します。

◆ 糸から宝物へ

私は、祖父が遺したコレクションの中から、今もしつけ糸がついたままの、汚れのない着物だけを厳選しています。 私の制作工程は、この白い糸を一本ずつ丁寧に解(ほど)くことから始まります。それは、長い眠りについていた美しい絹を呼び覚ます、神聖な儀式のようでもあります。

完成したシュシュに、もうその白い糸は見えません。 しかし、袖を通されるのを何十年も待ち続けてきた「バージン・ヴィンテージ・シルク」特有の、凛とした張りとなめらかな光沢は、そのまま息づいています。

あなたが身に纏うのは、単なる「古布」ではありません。 この瞬間のために、数十年の時を越えて守られてきた、純粋無垢な正絹(シルク)なのです。